当事務所(旭川事務所、名寄事務所共に)につきまして、本年8月10日から14日まで夏季休業とさせていただきますので、ご案内申し上げます。
業務開始は土日(通常休業)後の8月17日となります。
休業期間中はご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承のほどよろしくお願いいたします。
久々のブログ更新です。というより少しサボりすぎですね(汗)。
さて現在集団的自衛権に関する法案が国会で審議されておりますが,これは単に「自衛権」のあり方だけでなく,国民の個々の権利についての危機だということを自覚されている方はどの程度いらっしゃるでしょうか?
「えっ?集団的自衛権ってのはアメリカ等が攻撃された時に,日本も一緒に反撃するというものでしょ?それって自衛隊の人たちの問題だし,僕らの問題ではないでしょ?」
という方がいるかもしれません。
そんなことはありません。今集団的自衛権に関する法案が通ったら,近い将来「ツイッターやフェイスブックをする自由」「無理矢理国家のために働かされない自由」などありとあらゆる自由が国により制限される可能性があります。
例えば今日自分は国を批判するブログを投稿します。
これは憲法21条の「表現の自由」により保障される人権で公共の福祉に反しない限り制限を受けません。
憲法98条は,
「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部はその効力を有しない」
と定めておりますので,本来憲法が許していない行為を法律で許すとすることはできません。
従っていくら法律で定めても,このブログを国が抹消することはできません。
ところが現在審議されている集団的自衛権の法案は,自民党が呼び出した参考人の憲法学者,元内閣法制局長官ですら明確に違憲と断定するほど明らかに違憲の法律です。
元内閣法制局長官の見解。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6164441
自民党が参考人として呼び出した長谷部教授の見解。
http://synodos.jp/politics/14433
そのように一見明らかに違憲である法律であるにもかかわらず,現在の内閣総理大臣安倍晋三晋三氏(以下「安倍氏」といいます)は
「国民の支持が不十分でもいずれ理解する」と称し,ろくに議論もせず強行採決を企んでおります。
またその閣僚の中には「憲法を法律に適合させる」という見解を述べる人物もいます。
安倍氏が国民への説明が足りないことを自覚しつつも,本国会での成立を明言している記事。
http://no-border.co.jp/archives/33890/
「憲法を法律に適合させる」旨発言した防衛大臣の中谷氏。
http://www.bengo4.com/other/1146/1287/n_3217/
憲法審議会での議論を止めるようにと自民党国対委員長が指示したという記事。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150617-00000090-san-pol
要は
「憲法がなんと定めていようと集団的自衛権をやりたい!」
「憲法が禁止しているなら,その議論は避けよう,無視しちゃおう!」
「憲法改正は面倒だからなし崩しにやってしまおう!」
ということなのです。
ところで当初述べた国民の権利,すなわち人権というものは,本来人が人であるが故に当然に有する権利です。
ただそれは当然のように勝ち得たものではありません。
例えば表現の自由という言葉があります。そもそも国家にとって自分たちの政策に苦情を言う国民ほど困った存在はありません。そのため歴史上独裁国家は自分に都合の悪い言動を制限するため,常に国民による表現の自由を制限しております。
そのいい例として戦前の治安維持法が挙げられます。
憲法はそれら国家による人権侵害が行われる危険がある事を前提に,国家に対する国民の権利として基本的人権を定めております。
とすると憲法より上に法律が来た場合どうなるでしょうか。
法律で憲法9条を無視できるのですから,
法律で国民の権利を制限することができる,
とするのが素直な解釈になると思いませんか?
もし安部氏が「自分の政策に文句を言う奴は気に入らないので,これを法律で制限できるようにする」
と考え,自民党が多数を有する国会でその旨の法律を定めれば,安倍氏を批判する言動は一切できなくなります。
自分が今書いているブログも当然削除されるでしょう。
えっ?「安倍氏がそんなことするわけ無いじゃない」「いい大人がそんなことをするなんてあり得ない」
いえいえ,これがあり得るんです。
自分は安倍氏が何を考えているのかを知りたくて,安部氏のフェイスブックをフォローしているのですが,何故か賞賛するコメントばかりが並んでしました。
(というより一部嫌韓嫌中,ヘイトスピーチ系のコメントが多くてげんなり来るのですが・・)
それで世間一般の反応と比べておかしい,と思っていたところ,どうも自分に批判的なコメントはブロック・削除しているようなのです。
この傾向は他の安倍氏のお仲間も同じようです。
安倍氏のフェイスブックでブロックしていることが分かる記事。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-4619.html
磯崎補佐官が少女に論破され,ブロックした記事
http://matome.naver.jp/odai/2143383156970585501
政府に批判的な沖縄の新聞に対し,安倍氏を支持する自民党議員が圧力を加えるべきだと明言した記事
http://www.asahi.com/articles/ASH6V5TZMH6VUTFK01G.html
このような方々が「法律で憲法を無視できる」と分かったらどのような対応をするか,自ずから分かると思います。
まぁこのコメントもすぐ削除されるでしょうね(笑)。
改めてになりますが,国家というものは,性質上国民の人権を制限したがるものです。
現にこれまで国民の人権を制限してきたのは,私人ではなく国家で有り,人権擁護の戦いは常に国家を対象としたものでした。
憲法はえてして暴走しがちな国家に対してたがをはめ,それにより国家の暴走を防ぎ,国民の権利を守るためにできたものです。
ただ現在の安倍氏のように憲法を無視する輩が出てきた場合,憲法に頼るのではなく,国民一人一人が自らの権利を守るため立ち上がる必要があるのです。
少し長くなりましたが,現在の状況があまりに危険であるのでコメントさせて頂きました。
本日より当事務所に「司法修習生」が来所されました。
司法修習生というのは,いわゆる司法試験に合格した後,裁判所,検察庁,弁護士会でそれぞれ法曹の業務を行うに当たって必要な素養などを修行する人たちです。
ちなみにこの後「2回試験」という試験を合格すると弁護士(場合によっては裁判官や検察官)になることができます。
私も平成12年(だったかな・・)に函館で司法修習を体験しましたが,勉強しかしていない司法試験合格者の自分は,修習先で実社会の厳しさと,厳しい実社会で法曹として生きていくことの難しさ,何より法曹を必要とする依頼者が様々なところに存在するという事実に触れ,弁護士としての仕事をする上で非常に大きな影響を受けたことを良く覚えています。
ちなみに当事務所の司法修習生は62期,63期,64期,65期,それと今回来た68期の司法修習生の5人です。
今日来た修習生は自分が以前仕事をしていた名寄市出身!
司法修習で誰を担当するかは実はくじ引きで決まっているのですが(笑),6軒の修習指導担当弁護士の中からよりによってうちを引くという引きの良さ(悪さ? 笑)。
今は昔と違い修習生を取り巻く環境も厳しくなっておりますが,せっかくの縁ですし,頑張ってほしいものだと心より思います。
また当事務所での修習が彼の今後法曹として生きていく上での一助になればいいと心底思います。
しばらく更新を失念していました。失礼しました。
さて前回は弁護士過疎地域ではどういう理由で法律相談がしにくいか,ということを書きましたが,それに対し,どのような対策を取るべきか,ということを考えてみたいと思います。
前回のブログにも書いたように,弁護士が過疎地で利用されにくい要因は,地理的なアクセス障害に加え,心理的なアクセス障害が大きい,ということにあります。
このうち地理的アクセス障害だけであれば,単に地元に出向いて法律相談会を定期的に開催すれば問題ありません。
これについては過払いバブル全盛期であれば,どこぞの東京の大手事務所でも地元で公民館を借りるなどして実施しておりました(これの功罪についてはあえてここでは触れません)。
しかし弁護士の業務,というのが何処までを対象とするのか実は結構分かりにくいものです。
特に前回のブログで書いたように,これまで弁護士と面識も無く,使ったことも無く,裁判所にも行ったことのない人にとっては,
「自分の悩みは弁護士に相談するべきなのだろうか。」「弁護士に何を相談したらいいのだろう」というところに問題があります。
サラ金全盛時代であれば,「サラ金に悩んでいる方は是非弁護士を」とかいえばわかりやすいのでしょうが,
「離婚・相続・高齢者・会社法務・不動産・その他諸々で悩んでいる方は是非法律相談を」といっても「???」です。
また弁護士は「おっかない」「偉そう」とも思われておりますので,なかなか相談に行くのに踏ん切りがつかないものです。
そのためには
①長期的な視野に立って地元の人に弁護士の利用の仕方を知ってもらう
②比較的そういう悩みを持っている人との接点が多い人と多く接点を持つ
③比較的信用される団体(自治体・社会福祉協議会など)と提携して相談を行う。
ということが必要になっていきます。
かつこれらについては単独の弁護士が行うのでは無く,長期的に弁護士会全体として取り組まなくてはなりません。
例えば旭川地裁管内であれば,40以上の弁護士不在自治体がありますが,これを一人の弁護士で前記した活動を行うことは不可能です。
また自治体側としても,一人の弁護士が担当するより公益団体である弁護士会との方が提携するのに障壁が少ないためです。
そのため札幌弁護士会では,現在弁護士不在地域の自治体を頻繁に訪れて法律相談会や定期的な協議会を持つという取り組みを行っており(通称頻回相談),
また旭川弁護士会も今年4月から自治体を定期的に訪問して自治体と提携して法律相談会を開催し,かつその際自治体と協議して,戦略的視点から
弁護士過疎対策を行っていこうと言うことになりました。
正直この取り組みは,住民の皆さんの心理的な障害を取り除くという事から考えないといけません。
ですので,正直住民の方が東京や札幌と同じくらいの意識で弁護士に相談できるようになるにはかなり長い時間がかかると思います。
ただ何とかやっていかないといけないことだと思いますので,ご協力のほどよろしくお願いします。
取りあえず最初に一言。
おかしいだろ。これ。
何の話?
はい,先日可決された安保法案の話です。
*ちなみにこの「おかしいだろ。これ。」は新潟県弁護士会の会長コメント。
http://www.niigata-bengo.or.jp/about/statement/attachment/00000169-20150919115154.pdf
あまりにも適切すぎるので,ここしばらく安保法案の話をする際,使わせてもらっています。
流行語大賞にでもノミネートしたいくらいです。
ところで何がおかしいのでしょうか,ということを少し話させて頂きます。
たとえ話ですが,野球でとある有名球団のオーナーが,
「うちの球団にはフォークボールが得意なピッチャーが多いから,ワンバウンドでも何でもストライクだ!」
「うちの球団は人気球団でファンも多い,もし俺の言うことを聞かないなら新リーグ作るからな!」
(そういえばそれに似た発言をした人がいましたね)
などと言ってワンバウンドのボールをストライクだと審判に因縁をつけたら,
「おかしいだろ,これ」
ですよね。
だってある日突然そんなことでルールを変更されたら相手チームの人も困りますし,自分のチームのバッターも困ります。
何よりそんなむちゃくちゃなルール変更をされたのでは,ファンも困ります。
何事につけ,ルールというものがあるのです。
今回の安保法案の件に話を戻します。
何がおかしいかというと先ほどの例と同じくルール違反をしているからなのです。
ちなみに野球の規則は公認野球規則というものに定められていて,日本野球規則委員会というところで定めます。
これに対し,国政に関し,国・内閣・国会が守らなければならないことは,日本国憲法で定められております。
詳細は既に過去の投稿で述べているので省略しますが,
1.憲法9条は国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する,と定めており,かつ過去の政府解釈において集団的自衛権は9条に反するという解釈が確立している。従って本法案は一見明白に違憲である。
2.従って集団的自衛権を認めるには,憲法96条に定める憲法改正の手続を取り,各議員の総議員の2/3以上の賛成で発議し,国民の過半数の賛成を要するが,今回の安保法案は集団的自衛権を認める法案であるにもかかわらず,前記手続を執っていない。
3.内閣総理大臣を含め国務大臣,国会議員は,憲法尊重擁護義務を負うが,現内閣は明らかに違憲であると言う大多数の意見(その中には最高裁元裁判官が複数含まれている)を無視して,「自分が言うのだから合憲だ」「最終判断は最高裁だ」と主張して,合憲と主張し,通常の法案を成立させるのと同じ方法で法案を成立させた。
という点で明らかなルール違反があるのです。
後日述べますが,正直私は絶対に9条を維持しなければならない,と言う意見は持っておりません。
例えば憲法を形式的に解釈すれば自衛隊は違憲です。
ただ既に自衛隊も設立されて長くなり,かつある程度活動のあり方も確立されています。
こういう不安定な地位を解消するためにも,個別的自衛権を認めるような改正はありだと思います。
また「戦争は良くない」ということは世界中の人たちが分かっているにもかかわらず,戦争は無くなっておりませんし,
北朝鮮のようにミサイルを威嚇射撃するような国もあります(もっとも北朝鮮については個別的自衛権で対応可能です)。
その点からすると「そんな甘いこといってんじゃねーよ」という意見も全く理がないとは言えないでしょう。
この点自体は賛否両論あってしかるべきだと思います(但し自分は後日述べるように余り賛成できませんが)。
先の野球規則も新ストライクゾーンの導入など,相応の方法により変更が為されておりますので,憲法も時代に沿い,かつ国民の意思に基づく改正をすること自体は問題ありません。
ただこれらもルール違反が無ければ,です。
ルール違反,つまり憲法違反である以上,論外なのです。
某オーナーが自分の勝手でストライクゾーンを変更するのが論外であるのと同じ理由で,今回の安保法案は
「おかしいだろ。これ。」
という以外表現のしようがないのです。
まして国の話です。
先の某オーナーさんがいかに権力を持っていたとしても,それはせいぜいプロ野球業界の話。
ファン以外の人には影響はありませんし,人に何かを強制するような権力もありません。
せいぜい「新リーグ作るからな!」です。
しかし国については,全ての日本国民が生活・税金・警察・福祉その他において利害関係を持っております。
それを抑えて適切に権力を行使できるように規制するのが憲法なのです。
今回の件では,今まで全く意見を言いそうに無かった人たち,例えば憲法学者がそろって意見を述べたり,最高裁元長官が複数意見を述べたり,
たくさんの人たちが「おかしいだろ。これ」と声を上げております。
残念ながら明らかに違憲であるこの法案は成立してしまいましたが,このような国を決して許してはいけません。
もう一度改めて。
「おかしいだろ。これ。」