取りあえず最初に一言。おかしいだろ。これ。何の話?はい,先日可決された安保法案の話です。*ちなみにこの「おかしいだろ。これ。」は新潟県弁護士会の会長コメント。http://www.niigata-bengo.or.jp/about/statement/attachment/00000169-20150919115154.pdfあまりにも適切すぎるので,ここしばらく安保法案の話をする際,使わせてもらっています。流行語大賞にでもノミネートしたいくらいです。ところで何がおかしいのでしょうか,ということを少し話させて頂きます。たとえ話ですが,野球でとある有名球団のオーナーが,「うちの球団にはフォークボールが得意なピッチャーが多いから,ワンバウンドでも何でもストライクだ!」「うちの球団は人気球団でファンも多い,もし俺の言うことを聞かないなら新リーグ作るからな!」(そういえばそれに似た発言をした人がいましたね)などと言ってワンバウンドのボールをストライクだと審判に因縁をつけたら,「おかしいだろ,これ」ですよね。だってある日突然そんなことでルールを変更されたら相手チームの人も困りますし,自分のチームのバッターも困ります。何よりそんなむちゃくちゃなルール変更をされたのでは,ファンも困ります。何事につけ,ルールというものがあるのです。今回の安保法案の件に話を戻します。何がおかしいかというと先ほどの例と同じくルール違反をしているからなのです。ちなみに野球の規則は公認野球規則というものに定められていて,日本野球規則委員会というところで定めます。これに対し,国政に関し,国・内閣・国会が守らなければならないことは,日本国憲法で定められております。詳細は既に過去の投稿で述べているので省略しますが,1.憲法9条は国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する,と定めており,かつ過去の政府解釈において集団的自衛権は9条に反するという解釈が確立している。従って本法案は一見明白に違憲である。2.従って集団的自衛権を認めるには,憲法96条に定める憲法改正の手続を取り,各議員の総議員の2/3以上の賛成で発議し,国民の過半数の賛成を要するが,今回の安保法案は集団的自衛権を認める法案であるにもかかわらず,前記手続を執っていない。3.内閣総理大臣を含め国務大臣,国会議員は,憲法尊重擁護義務を負うが,現内閣は明らかに違憲であると言う大多数の意見(その中には最高裁元裁判官が複数含まれている)を無視して,「自分が言うのだから合憲だ」「最終判断は最高裁だ」と主張して,合憲と主張し,通常の法案を成立させるのと同じ方法で法案を成立させた。という点で明らかなルール違反があるのです。後日述べますが,正直私は絶対に9条を維持しなければならない,と言う意見は持っておりません。例えば憲法を形式的に解釈すれば自衛隊は違憲です。ただ既に自衛隊も設立されて長くなり,かつある程度活動のあり方も確立されています。こういう不安定な地位を解消するためにも,個別的自衛権を認めるような改正はありだと思います。また「戦争は良くない」ということは世界中の人たちが分かっているにもかかわらず,戦争は無くなっておりませんし,北朝鮮のようにミサイルを威嚇射撃するような国もあります(もっとも北朝鮮については個別的自衛権で対応可能です)。その点からすると「そんな甘いこといってんじゃねーよ」という意見も全く理がないとは言えないでしょう。この点自体は賛否両論あってしかるべきだと思います(但し自分は後日述べるように余り賛成できませんが)。先の野球規則も新ストライクゾーンの導入など,相応の方法により変更が為されておりますので,憲法も時代に沿い,かつ国民の意思に基づく改正をすること自体は問題ありません。ただこれらもルール違反が無ければ,です。ルール違反,つまり憲法違反である以上,論外なのです。某オーナーが自分の勝手でストライクゾーンを変更するのが論外であるのと同じ理由で,今回の安保法案は「おかしいだろ。これ。」という以外表現のしようがないのです。まして国の話です。先の某オーナーさんがいかに権力を持っていたとしても,それはせいぜいプロ野球業界の話。ファン以外の人には影響はありませんし,人に何かを強制するような権力もありません。せいぜい「新リーグ作るからな!」です。しかし国については,全ての日本国民が生活・税金・警察・福祉その他において利害関係を持っております。それを抑えて適切に権力を行使できるように規制するのが憲法なのです。今回の件では,今まで全く意見を言いそうに無かった人たち,例えば憲法学者がそろって意見を述べたり,最高裁元長官が複数意見を述べたり,たくさんの人たちが「おかしいだろ。これ」と声を上げております。残念ながら明らかに違憲であるこの法案は成立してしまいましたが,このような国を決して許してはいけません。もう一度改めて。「おかしいだろ。これ。」
取りあえず最初に一言。
おかしいだろ。これ。
何の話?
はい,先日可決された安保法案の話です。
*ちなみにこの「おかしいだろ。これ。」は新潟県弁護士会の会長コメント。
http://www.niigata-bengo.or.jp/about/statement/attachment/00000169-20150919115154.pdf
あまりにも適切すぎるので,ここしばらく安保法案の話をする際,使わせてもらっています。
流行語大賞にでもノミネートしたいくらいです。
ところで何がおかしいのでしょうか,ということを少し話させて頂きます。
たとえ話ですが,野球でとある有名球団のオーナーが,
「うちの球団にはフォークボールが得意なピッチャーが多いから,ワンバウンドでも何でもストライクだ!」
「うちの球団は人気球団でファンも多い,もし俺の言うことを聞かないなら新リーグ作るからな!」
(そういえばそれに似た発言をした人がいましたね)
などと言ってワンバウンドのボールをストライクだと審判に因縁をつけたら,
「おかしいだろ,これ」
ですよね。
だってある日突然そんなことでルールを変更されたら相手チームの人も困りますし,自分のチームのバッターも困ります。
何よりそんなむちゃくちゃなルール変更をされたのでは,ファンも困ります。
何事につけ,ルールというものがあるのです。
今回の安保法案の件に話を戻します。
何がおかしいかというと先ほどの例と同じくルール違反をしているからなのです。
ちなみに野球の規則は公認野球規則というものに定められていて,日本野球規則委員会というところで定めます。
これに対し,国政に関し,国・内閣・国会が守らなければならないことは,日本国憲法で定められております。
詳細は既に過去の投稿で述べているので省略しますが,
1.憲法9条は国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する,と定めており,かつ過去の政府解釈において集団的自衛権は9条に反するという解釈が確立している。従って本法案は一見明白に違憲である。
2.従って集団的自衛権を認めるには,憲法96条に定める憲法改正の手続を取り,各議員の総議員の2/3以上の賛成で発議し,国民の過半数の賛成を要するが,今回の安保法案は集団的自衛権を認める法案であるにもかかわらず,前記手続を執っていない。
3.内閣総理大臣を含め国務大臣,国会議員は,憲法尊重擁護義務を負うが,現内閣は明らかに違憲であると言う大多数の意見(その中には最高裁元裁判官が複数含まれている)を無視して,「自分が言うのだから合憲だ」「最終判断は最高裁だ」と主張して,合憲と主張し,通常の法案を成立させるのと同じ方法で法案を成立させた。
という点で明らかなルール違反があるのです。
後日述べますが,正直私は絶対に9条を維持しなければならない,と言う意見は持っておりません。
例えば憲法を形式的に解釈すれば自衛隊は違憲です。
ただ既に自衛隊も設立されて長くなり,かつある程度活動のあり方も確立されています。
こういう不安定な地位を解消するためにも,個別的自衛権を認めるような改正はありだと思います。
また「戦争は良くない」ということは世界中の人たちが分かっているにもかかわらず,戦争は無くなっておりませんし,
北朝鮮のようにミサイルを威嚇射撃するような国もあります(もっとも北朝鮮については個別的自衛権で対応可能です)。
その点からすると「そんな甘いこといってんじゃねーよ」という意見も全く理がないとは言えないでしょう。
この点自体は賛否両論あってしかるべきだと思います(但し自分は後日述べるように余り賛成できませんが)。
先の野球規則も新ストライクゾーンの導入など,相応の方法により変更が為されておりますので,憲法も時代に沿い,かつ国民の意思に基づく改正をすること自体は問題ありません。
ただこれらもルール違反が無ければ,です。
ルール違反,つまり憲法違反である以上,論外なのです。
某オーナーが自分の勝手でストライクゾーンを変更するのが論外であるのと同じ理由で,今回の安保法案は
「おかしいだろ。これ。」
という以外表現のしようがないのです。
まして国の話です。
先の某オーナーさんがいかに権力を持っていたとしても,それはせいぜいプロ野球業界の話。
ファン以外の人には影響はありませんし,人に何かを強制するような権力もありません。
せいぜい「新リーグ作るからな!」です。
しかし国については,全ての日本国民が生活・税金・警察・福祉その他において利害関係を持っております。
それを抑えて適切に権力を行使できるように規制するのが憲法なのです。
今回の件では,今まで全く意見を言いそうに無かった人たち,例えば憲法学者がそろって意見を述べたり,最高裁元長官が複数意見を述べたり,
たくさんの人たちが「おかしいだろ。これ」と声を上げております。
残念ながら明らかに違憲であるこの法案は成立してしまいましたが,このような国を決して許してはいけません。
もう一度改めて。
「おかしいだろ。これ。」