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法人の債務の個人保証について


 法人の破産の法律相談の中で、多く問題となるのが、法人の債務に関して保証人になっている方のことです。法人の代表者が法人の債務の保証人になっていることも多いですが、そればかりではなく、代表者の親族もまたあわせて保証人になっていることもよくあります。その場合、法人と代表者があわせて破産申立を行うとしても、債権者は保証人になっている代表者の親族に対して請求を行うことになります。そのため、法人及び法人の代表者のみならず、保証人となっている親族が揃って破産を余儀なくされることもありえます。こうした保証人に対する影響があることから、支払不能になっていても法人破産に踏み切ることがなかなかできなかったという悩みも相談の中で聞いてきました。

 法務省の法制審議会民法(債権関係)部会は2009年より民法改正に関する議論を進めており、先月26日には民法改正の中間試案を決めています。中間試案の中には銀行などが中小企業に貸付を行う場合にも、個人保証について経営者以外は認めないとの内容が含まれており、保証制度について大きな変更を行うことを予定しています。法制審議会民法(債権関係)部会の資料では、保証について「個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たない」「自殺の大きな要因になっている連帯保証制度を廃止すべきであるなどの指摘もある」など保証制度の問題点の指摘がなされており、こうした問題意識が中間試案の背景にあることは疑いありません。

 この点、金融実務上も信用保証協会が保証申込があっても、経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを原則として禁止する取り扱いをするなど、個人保証を求める場面は従前に比べて少なくなっています。また、金融庁も2011年に「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立」を明記した監督指針を打ち出しています。上記中間試案は、こうした実務上の取り扱いの方向にも沿うものであるといえると思います。

 上記中間試案の呈示する保証制度の改正については様々な意見が出されうるところであり、今後現実の法改正に向けて議論がなされることになりますが、私としては中間試案の方向性には賛同できます。「保証人に迷惑をかけるため」法人破産に踏み切ることができず、結果「自分の生命保険金で借金を支払ってほしい」という遺書を残した方の遺族から相談を受けたこともあり、保証制度の弊害を実感しているからです。また、経営者が保証人に迷惑をかけるため法人破産に踏み切ることができず、事業再生の早期着手を行うことができないことは、地域経済にとってけっしてプラスにはならないと考えるからでもあります。

弁護士:大窪 和久
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